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時給制ラヴァーズその後の短編

第1章 短冊に想いを込めて


 それは確か、六月の終わりだった気がする。
 いつものスーパーに慶人と買い物に来た時に見つけたのは、七夕用の大きな笹と短冊。
 飾られた笹のもとに置かれた長机。その上に半分に切った折り紙が束になって置かれていて、誰でも願い事を書いていっていいようになっていたんだ。

 一人で来ていたらスルーしていたことかもしれないけれど、なんとなく慶人にやらせたくなって「書いてみようよ」と誘った。
 慶人は明らかに子供がメインのその作りに肩をすくめたけれど、強くは否定せずに俺について机の前に立った。
 別に見せてはいけないルールなんてなかったけれど、やっぱりこれもなんとなくお互い願い事を明かさないように隠して書いて、そのまま置いてあったボックスの中に入れた。どうやら後日飾ってくれるらしい。
 それで満足したからその時のことはすっかり忘れてたんだけど。


「あ」

 たまたま七夕のその日にスーパーを訪れて、でっかい笹に吊るされた色とりどりの短冊を見てその時のことを思い出した。
 この前書いたものもこの中に飾られているんだろうかと足を止めて眺めてみる。すると比較的すぐに一枚の短冊が目に付いた。

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