キス魔は浴衣で燃える
第1章 1.お誘い
「旅行しませんか」
ある日の夕飯終わり。慶人がそんな提案をしてきたのは二人してソファーに並んで座り、テレビを見つつまったりしている時だった。
なんというか、慶人のお誘いはまるでダンスでも誘うかのようだ。
「旅行? お、いいね。たまには温泉でまったりとかしたいねー」
「良かった。じゃあ行けそうな日付教えて」
そういうのもいいよねーなんて、ぼんやりした相づちを打つ程度の俺に対して、慶人は嬉しそうに微笑みさっそく話を進めてきた。
どうやら慶人の中ではもうある程度プランが決まっているらしい。
慶人と旅行。温泉?
確かに、訳あって恋人のふりをしていた時、やっぱり訳あって見せびらかす用の写真を撮るための偽デートはしたけれど、本当の恋人になってからは特別デートとしてどこかに出かけたことはない。だから、それもいいかなと遅ればせながらその気になってくる。
慶人は今までの友達にはいなかったタイプだから、旅行といってもまた違うものになるんだろう。
それこそバカ騒ぎするような感じじゃなくて、もっとしっぽりと温泉自体を楽しむような……。
と、そこまで考えて、ふと心配が過ぎった。なんせ紹介されて出会うまではまったく接点のなかった俺たちだ。今住まわせてもらっているマンションが慶人のものであるように、俺たちはまったく別の世界を生きていた。
だからもしかしたら俺が思っているような温泉と慶人が言っているようなそれは全然違うものじゃないかと急に不安になった。
「あ、慶人。俺、予算的にあんま高いとこは無理だよ」
「それは気にしないで。今回は、俺から贈りたいから」
だからそれとなく予算のことを口にしたら、予想とは違う回答が来た。
予算を気にしないのは慶人が払うから?
ある日の夕飯終わり。慶人がそんな提案をしてきたのは二人してソファーに並んで座り、テレビを見つつまったりしている時だった。
なんというか、慶人のお誘いはまるでダンスでも誘うかのようだ。
「旅行? お、いいね。たまには温泉でまったりとかしたいねー」
「良かった。じゃあ行けそうな日付教えて」
そういうのもいいよねーなんて、ぼんやりした相づちを打つ程度の俺に対して、慶人は嬉しそうに微笑みさっそく話を進めてきた。
どうやら慶人の中ではもうある程度プランが決まっているらしい。
慶人と旅行。温泉?
確かに、訳あって恋人のふりをしていた時、やっぱり訳あって見せびらかす用の写真を撮るための偽デートはしたけれど、本当の恋人になってからは特別デートとしてどこかに出かけたことはない。だから、それもいいかなと遅ればせながらその気になってくる。
慶人は今までの友達にはいなかったタイプだから、旅行といってもまた違うものになるんだろう。
それこそバカ騒ぎするような感じじゃなくて、もっとしっぽりと温泉自体を楽しむような……。
と、そこまで考えて、ふと心配が過ぎった。なんせ紹介されて出会うまではまったく接点のなかった俺たちだ。今住まわせてもらっているマンションが慶人のものであるように、俺たちはまったく別の世界を生きていた。
だからもしかしたら俺が思っているような温泉と慶人が言っているようなそれは全然違うものじゃないかと急に不安になった。
「あ、慶人。俺、予算的にあんま高いとこは無理だよ」
「それは気にしないで。今回は、俺から贈りたいから」
だからそれとなく予算のことを口にしたら、予想とは違う回答が来た。
予算を気にしないのは慶人が払うから?