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キス魔は浴衣で燃える

第3章 3.海

「いや、ごめん。続けて」
「それを他の友達で置き換えて考えてみようとしたんだけど、考えられないんだよね。いや、ないでしょって思っちゃって、議論になんないんだよ。慶人と他の誰かを比べらんない」

 だからやっぱりあんまりちゃんとした答えが出ないんだけど、と窺い見た慶人はなんだかすごく驚いた顔をして俺を見ていた。

「……なんだ。ちゃんと俺のこと好きでいてくれてるんだ」
「こういうのでいいの?」

 その返しに、今度は俺がびっくりする。
 俺、ちゃんと慶人のこと好きなの?

「君がいないと生きていけない! みたいな情熱的なのじゃなくて、ふとした瞬間に、あ、かっこいいな、好きだなって思うちっちゃい気持ちの積み重ねでも、いい?」
「それがいい。お前がいい」

 飛びつくみたいに勢いよく抱きつかれて、危うく後ろに転げそうになりながら耐える。
 それでも苦しいくらい俺を抱き締める慶人は、しばらくの間ずっとそのままでいた。言葉の代わりの、速い鼓動が伝わってくる。
 慶人、ドキドキしてる。

「……天、ドキドキしてんな」

 俺が思ったのと同じタイミングで、慶人がくすりと笑って言うものだから、なんだかそが嬉しくて、俺の方から軽いキスをした。

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