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キス魔は浴衣で燃える

第4章 4.ふたり

 そうやって帰ってきた部屋の中にはすでにしっかりと布団が敷かれていて、それがまた気恥ずかしさを煽る。

「えっと、冷えちゃったし風呂入らない?」

 とりあえずそれを誤魔化すように提案してみたら、慶人は一瞬なにか言いたげな顔をして、それでも肩をすくめて笑った。

「上行く?」
「ううん、せっかくだし二人で入ろ。いちゃいちゃしたい気分」

 慶人は優しい。だから基本的にはこうやって俺の考えを優先してくれる。
 だからって別に俺だってわざとすかしているわけじゃない。本当に海風で冷えていたし、せっかく慶人が取ってくれた、露天風呂付きの部屋なんだ。ちゃんと味わわないともったいない気がして。
 だから指さしたのは部屋の奥の露天風呂。大浴場とは違う、二人だけの空間。

 てっきりさっきと同じように大浴場に行くと思ってただろう慶人は、俺の発言に少しだけ面食らった顔をしたけど、すぐに了承してくれて今度こそ二人で風呂に入ることになった。

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