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キス魔は浴衣で燃える

第5章 5.朝

「ん……」

 次の日、というよりかは数時間後の朝。
 寝返りを打とうとして動かない体に違和感を覚え、ぼんやりと目を開ける。
 日差しからして起きるにはまだだいぶ早い時間。目の前には、疲れたような、すっきりしたような慶人の顔があって、どうやらゆるりと抱きしめられているらしいことに気づいた。

 慶人を起こさないようにほんの少しだけ体を離して見てみると、乱れていた浴衣が直っている。慶人がやってくれたんだろうか。
 でもその合わせ目から見えた胸元にはしっかりとキスマークがついていて、はだけて確かめたところかなりの量が見えた。いつの間に。

「……」

 なんとなく対抗心が出て、慶人の浴衣をはだけると体をずらして胸元に唇を押し当てた。
 そういえば、キスマークってどうやったら残るんだろう。あまり残そうと思ったことがないからいざやろうと思うと難しいな。
 とりあえず少し強めに吸いついてみればいいんだろうか。

「んむっ、んちゅ」
「……なにしてんの」

 もぞもそと胸元に顔を埋めて試していた俺の頭の上から、寝ぼけた声が降ってきた。
 寝起きだからかいつもより低くて、それがまた色っぽいのがずるい。

「キスマークつけてる」

 だから俺は顔を上げないまま答えだけを投げる。すると小さく息を吐いた慶人に肩を叩かれた。

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