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キス魔は浴衣で燃える

第5章 5.朝

「どうせキスすんならこっちにしろよ」

 見上げれば、まだ少し眠そうな顔で自分の唇を指す慶人。そういうことじゃないんだけど、とは思いつつも、すぐにまあいいかと切り替えて伸び上がるようにしてキスをする。
 それを受け止めた慶人は俺を引き上げ正しい位置に戻すとさらにキスを深めた。
 寝ぼけているのか、はたまた起きているからなのか、朝からキスが濃厚だ。

「んーんー、……待っ、た、待った! 慶人さん、朝ですよ」

 あまりに熱烈なちゅーにタップをして苦しさを訴えると、大人しく離れてくれたからほっと息をつく。

「おはよう」
「おはよ」

 それから改めて朝の挨拶と、今度は軽いキス。そしてそのまま流れるように強く抱き締められて、再度苦しさを訴える前に耳元で慶人のため息が聞こえた。

「旅行やばいな」
「やばい? なんで?」
「お前のことが好きになりすぎて止まらなくなる」

 そしてまた幸せそうなため息。
 初めて会った時に眉間にしわを深く刻んでいた人とは思えないくらい甘い声の響きに、つられて笑ってしまった。
 普段は隙のないイケメンのくせに、こういう時の慶人はとても可愛い。

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