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キス魔は浴衣で燃える

第5章 5.朝

「お前ってホント……」

 そう思ったから素直に言っただけなのに、慶人は頭を抱えてしまった。ダメだったんだろうか。恋人同士なら、人前じゃなければいちゃついたっていいと思ったんだけど、もう少し気をつけた方がいいんだろうか。
 とにかく、慶人を困らせたくてやってるわけじゃないから少し自重しようと決めて、それから気分を切り替えようと温泉へと誘う。

「えーと、ほら、風呂入ろ。まだ俺ご奉仕足りてないよ。背中洗ってあげる」
「っ! お前って本当に……!!」
「おわっ!?」

 と、どうやらそれもダメだったらしい。
 勢いよく押し倒されて、その上に跨った慶人からキスの嵐をお見舞いされた。髪におでこにまぶたに鼻先に、いたるところに甘いキスを落とされる。

「もー慶人ってマジでキス魔だよね」
「お前に限ってだよ、こんなの全部」

 恥ずかしいくらい愛しげな視線で見つめられ、手を取られて手のひらにキスをされた。
 いつも戯れに手の甲にキスをされたりするけど、手のひらは珍しい。なんて、今そんなことが気になっちゃう俺って、やっぱ慶人の言うとおりちょっと変なのかも。
 それでも、慶人が今するんだから意味があるんだろうなと気になっちゃって。

「……なんだっけ。手のひらって、なんか意味あったよね」
「後で調べな」

 俺が気にするのまで予想済みだったらしい慶人は、ふふんと鼻を鳴らして得意げな笑みを見せて、それからまた鼻先にキスをしてきた。

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