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いい女 惜別…

第1章 惜別…

 ③

「この際さぁ、思い切って手放しちゃってさぁ…
 一度リセットする…
 いや、7回忌だし、リセットする時なんじゃないのかなぁ…」

 そうかもしれない…

「幸い、アンタは子供もいないんだし…
 ここでリセットして、新たな男を探してさぁ…」

 そんな事だって、とうに分かっている…

 そして何度も、何度も考えた事もある…

「うん、だ、だけどさぁ」

「怖いんでしょう?…」

「え…」

「リセットしてさぁ…
 全部無くしてさぁ…
 また、初めからやり直すのが…
 怖いんでしょう…」

「え…」

 さすが、小学生時代からの唯一無二の親友だ…
 ズバリ、その通りなのであった。

 わたしは…

 リセットが…

 怖い、怖いのだ…


「アンタはさぁ、子供の頃から気に入ったモンの物持ちいいもんねぇ」

 そう、気に入ったモノはなかなか捨てられない…

「そんなんだからさぁ…
 あぁ、さてはぁ…
 彼のモノも全部まだ取ってあるなぁ」

「あ、い、いや…」

 正に、その通りであった…

「あちゃぁ、ダメだよ…
 もう7年だよ、もういいでしょう」

 もういいでしょう…
 彼女の言葉がズシンと心に刺さってくる。

「もうさぁ…
 きっと彼もさぁ、そこまでは求めて無いと思うよ…」

 確かにそうだとは、思うのだ…

「よしっ、私がアンタにきっかけを与えてあげるわぁ」

「えっ、きっかけって?…」

「うん、まずはクルマかなぁ…」

「え、く、クルマって?…」

「クルマを買い換えよう」

「え…」

「ちょっといい男のクルマ屋紹介するからさぁ…」

「え、あ、で、でも…」

「いいじゃん、まずは会うだけでもさ」

「え、い、いや…」

 彼女の顔を見ると、実は、これが目的だったみたいである…

「いいじゃん、クルマ買い換えは別にしてさぁ、まずは…」

 会ってみようよぉ…

 マジ、いい男だからさぁ…

「え…」

「私が独身だったら…って相手だから」

 実は、彼女は、昔から…

 言い出したら聞かないのだ…

「ね、いいでしょう」

「あ、う、うん…」

 仕方がない…

 逆らうだけ無駄であったから…



 ところが…





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