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いい女 惜別…

第1章 惜別…

 ⑧

「じゃあ、いい女の条件からの別れ…
 そしてスパイダーとの惜別ですね…」

「え…」

 別れ…

 惜別…

 この男も…

 彼は…

 分かっているみたい…



「あ、違うかぁ…」

「え、違うって?」

「いい女の条件からの別れ…
 じゃなくて…」

「え…」

「いい女の条件からの卒業…っすね」

「え、そ、卒業って?」

「いい女の条件から卒業して…

 ホンモノの…

 本当の…

 いい女になる…」


「………」

「その為の、スパイダーとの惜別ですね…」

「え、い、いや、ただ…
 ただ、エアコンが壊れ…」

 いや、ただエアコンが壊れただけなんだけど…


「いや、違いますよ…」

「え?…」

「これはきっと…」

 いい女の条件からの…

 そしてスパイダーからの…

 いや、愛する、愛していた旦那さんからの…

 卒業の…

 いや、惜別のメッセージですよ…

「え、惜別のメッセージ?…」



「あ、はい…

 もういいんじゃないか…

 いや、もういいから…
 
 っていうメッセージですよ」


 
「え…あ…」

 でも、そうなのかもしれない…

 彼のこの言葉は、ある意味、言い得て妙な…

 そして妙に…

 先週のスパイダーが壊れた時に、わたしが想い浮かべた想いと一致するのだ。


「多分…間違いないですよ…」 


「え?…」

 なんで?…


「だって、自分もそうだったから…」

「自分もそうって?…」

 実は…


 わたしはこの後、彼から聞いた話しで、この卒業の想い…

 惜別の想い…

 それらの想いを確信したのである…

  
 そして…


 その彼の話しは…



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