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フラワーアレンジメント

第1章 フラワーアレンジメント

 ③

「いつもお世話になっております…」

 響子オーナーの姿は以前に1度だけ遠目で見た事はあったのだが…
 だからそのややハスキーな声がなんとなく意外に感じられた。

 クレームなのだろうか?…

 打ち合わせをしたとはいえ、どうしてもアレンジコーディネートは個人差やセンスの違いが顕著に表れるから、当然妻とは違いが出てしまう…

 ただし…

 なかなかそこまでの違いが分かる存在は少ない…

 そして逆に自分自身のセンスには自信があるから…

 まさかクレームなんて?…

「ええ、確か前回からかしら、なんとなくアレンジメントの花使いの雰囲気が微妙に変わったからちょっと気になって…
 お電話したのだけれど…」

 やってしまったか?…

「あ、はい、確かに前回からは…
 私がアレンジコーディネートしてまして…
 お店の雰囲気にそぐわなかったでしょうか?…」

 俺は、弱冠、冷や汗を掻いてしまう…

「だったら、大至急作り直させて…」
 慌ててそう告げる…

「あっ、いや、いえ、違うのよ」

 響子オーナーは慌てて俺の言葉を制してきた…

「は?…」

「逆よ、逆…
 以前よりなんとなくアレンジメントが煌びやかになった感じがして…
 それでちょっと気になったものだから、訊いてみようかなぁって…」

 クレームではなく…
 真逆な、嬉しい、讃辞の電話であった。

「そ、そうですか、そうかぁ、それは良かった、嬉しいです…」
 思わずテンションが上がってしまう。


「あ、はい、あら、じゃあ、社長さんのコーディネートなのかしら?」

「は、はい、そうなんです、実は妻が…」
 そして俺はこの最近の経緯を話し、説明不足を謝罪した。

「あらそれは大変ですね…
 でも大丈夫、ウチとしては問題ないですから…」

 逆に、より豪華に、煌びやかになったから好ましい…
 とまで云ってもらい、更にテンションが上がってしまう。

「あのぉ、改めてご挨拶に伺いたいのですがぁ?」
 そしてそのテンションの勢いもあり、また、ちゃんと響子オーナーと話してみたい…
 そんな想いの衝動が瞬時に湧き、そう問うた。

「あら、わざわざいいのに…」

「いえ、改めてお店の雰囲気を直でも観てみたいですし…」

「そうですか、じゃ、エステサロンの方に今日は居ますけれど…」

 エステサロンに向かう…



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