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それでも貴方が恋しくて

第1章 再会

◇未紗視点

私、黒嶋未紗は19歳の時にデキ婚した。

旦那は同い年で、付き合って1年と少し経った頃に妊娠が発覚。私は迷わず産むことを決めたし、旦那も『結婚しよう』と言ってくれた。

妊娠をきっかけに体調が優れない日々が続いて、精神のバランスを崩してしまった私は、仕事を辞めて専業主婦になった。

妊娠前は仕事もしつつ友人と遊び回ってたのに、ガラッと環境が変わってしまって、家に引きこもることが格段に増えた。よく遊んで連絡を取り合っていた幼馴染の将とも私の妊娠・結婚を機に自然と疎遠になって正直寂しかった。

…私と将は保育園から中学校までずっと一緒で、お互い両思いだった時期もあったと後に知った。

お互いに『好き』と言い出せなくて、私達が恋人関係になったことは一度もない。

でも、そんな私達は…体の関係を持ってた時期がある。中3の数ヶ月の間だけ、友達以上恋人未満な曖昧な関係を謎に続けていた。

…あの時、将と付き合っていれば何かが変わっていたのかな?

結局、将とは10年以上連絡を取らず、会ってもない。

「未紗、今日だっけ?同窓会」
「うん」
「未紗が同窓会に行くなんて初めてじゃね?」
「確かに初めてかも」
「何でまた急に行く気になったわけ?」
「久しぶりに絵里から連絡あって、30歳の節目に同窓会おいでよって」
「あー、絵里ちゃんとか懐かしいね」
「でしょ?絵里に会うのも何年ぶりかなぁ」
「ま、楽しんでおいでよ~。俺は詩織連れて実家行ってくるから」
「うん。ありがとう、司」

司と詩織を見送った後、私は同窓会に行く準備を始めた。

司は決して悪い人じゃないし、仲もいいんだけど…私の誕生日も結婚記念日も忘れちゃうような人。結婚して1~2年の頃はそんなこと無かったけど、それ以降は全然ダメ。期待しちゃうと何もなかった時が悲しいし苛立つから、期待することを辞めてからは随分とラクになった。

あと、これはまともに働けない私にも原因はあるんだけど、生活は毎月キツキツで頭が痛い。

司の会社は本当に給料が上がらないし、将来性がまったくない。でも仕事が楽だから転職はしたくないって。

私は精神面の都合上、しっかり働くことができなくて平日に軽くパートで働いてるだけ。

マイホームなんて夢のまた夢。

────マイホームかぁ…憧れちゃうなぁ。

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