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慕情

第3章 紫仙の過去


【紫仙の過去】

 此処は【神仏の領域】
 
 桃の木の太い枝の上に背凭れ…
それは美しく純白の衣を身に包み…
熟した桃を頬張っている一人の青年が居た…

 その青年の名は紫仙…いや…
まだ、その名は、まだ見ぬ未来の名前…

 刻下の名は神楽…

「やっぱ熟した桃は旨いなぁ…
ほらッ…泡沫も食えよ…?」

 泡沫は、そわそわしながら
太い木の幹で不安げに、うろうろしている…

「うわわ…ッ…ねぇ…神楽~…
やっぱり盗み食いは良くないよ…?
しかも…この桃は、今度、開催される
年に一度の【仙人の領域】で行われる大会
(六芸)での献上品…
それに今…神楽が食べてるのは初物…
見つかれば処罰されちゃうよ…?」

※六芸とは…
礼(道徳教育)楽(音楽)射(弓術)
御(馬車を操る技術)書(文学)数(算数)

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