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アパート

第8章 人間もよう(2)

最近、夜、外で話し声が聞こえることが多くなった。

沙耶香と2階のチャラい男との会話なのは声で分かるが、内容までは聞き取れないし、分かりたくもなかったが、楽しそうな雰囲気は感じる。

おそらく2階の男が帰って来たタイミングを見計らって、沙耶香が何か理由を見つけて話しかけているんだと思った。僕のときがそうであったように、どちらかが会うために行動しなければアパートの住人同士が偶然会うことはほとんどないのだ。

もう沙耶香のことは諦めた僕にとっては、どうでもいいことであるはずなのだが、頭では分かっていても心は穏やかではない。

ただ、いつもそこまで長い間話をしている訳ではないのが僕にとっては救いだった。

気が付くと話し声は聞こえなくなり、階段を登る音と、隣でドアの閉まる音がするのが分かる。

階段を登る音とドアの閉まる音は、今の僕にとって安心をもたらす音なのだ。

話は変わるが、以前沙耶香が言っていた通り、2階のチャラい男には彼女がいる。たまに車のドアの閉まる音がして、2階に上がる階段をトントントントンと駆け上がる軽い足音がするときがあり、外を見るとその男の車の真後ろに薄い水色の軽自動車が止めてある。駐車スペースがないので、そのような止め方をしているのだ。男の車はその間出ていかない前提で止めてあるので、男の関係者であることが分かる。

最近は、来ている頻度が高くなっているようだ。

もっと言うと、男の彼女が頻繁に来るようになったことと、沙耶香が男と話す回数が増えていることには、お互いに関連があるのかもしれない。つまり、三角関係的なことになっているのではないかと…。

まー、僕には関係のないことではあるが…。




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