
はなことば
第10章 Coreopsis《大学生》
別荘に向かう山道を歩く途中のことだった
唯音「うわぁっ!!」
彼は盛大に転んだ
昨日の雨で地面がぬかるんでいたため
彼の服は泥まみれ
李杏「ちょっと!大丈夫?」
彼に手を伸ばし
立たせると
唯音「……お姉さん、、どこがで……」
李杏「っ!……早く行くよ!」
言いかけた言葉に被せるように
すぐに背を向け、歩き出した
間もなくして別荘に着いた
李杏「ちょっとまってて。」
彼を玄関前で待たせた
部屋の中をササッと片付けると
ガチャ
扉を開け、彼に言った
李杏「……お風呂入ったら?」
唯音「え?」
李杏「そんな泥だらけで行くつもり?
うちで着替えたら?」
唯音「いいんですか?」
李杏「ん。
…タオル持ってくるから洗面所で待ってて。」
そういうと
彼を部屋へと招き入れた
シャワーの音が聞こえ始めた頃、
私は慌ててマスクを探した
バレたくない
歌田 李杏だと
バレるわけにいかない
シャワー音が止まり
彼がでてきた
唯音「シャワー、ありがとうございました!」
李杏「っっ!!!」
唯音「……どうかしました?」
彼が着ていたTシャツ
それは
私も出演していた数年前の
coconutsのLIVETシャツ
李杏「……」
唯音「……お姉さん?」
李杏「っ、コンビニ……やっぱりついていけない」
唯音「えっ、」
李杏「…予定ができたの。……地図書くから…。」
唯音「あっ、分かりました。…なんかすいません。」
李杏「っ、玄関でまってて。」
彼を玄関で待たせ、
メモに書いた地図を渡した
唯音「んー、やっぱり……
どこがで……会ったことあるような……?」
李杏「えっ、、?
唯音「なんか会ったことあるような気がして」
李杏「っ、、会ったことないから!
……ナンパなら他でやってくれる?
もう、早く帰って。」
唯音「あ、いやっ…ナンパって訳では…」
彼をなんとか外に追い出すと
逃げるように部屋に戻った
李杏「はぁ……」
