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はなことば

第10章 Coreopsis《大学生》


2人は山小屋の中に入った



唯音「これ使ってください」


リュックから大きなタオルを取り出すと
私に差し出した


李杏「っ、でも……唯音は?」

唯音「俺、大丈夫なんで。」

李杏「でも……」

唯音「ほら、いいから!」


そういってタオルを広げ
私に被せた


小屋の中は
古びていたが
机、椅子、暖炉
…そしてキッチンのような水場もあった



李杏「うわぁ、服びちょびちょだ」

そういって着ていた上着を脱いだ


唯音「雨、弱まるまでここに居ましょう」

李杏「そうだね」



唯音「あっ……!!」

何かに気づいたのか声を上げた
そして少しうつむいた

李杏「なに?………唯音?」

唯音「こ、これ……羽織ってください」


そういうと唯音は
上着を脱いで渡してきた


李杏「いいよ、大丈夫。」

唯音「いや…」

李杏「本当に大丈夫だって」

唯音「いいから、羽織ってください」

李杏「やだよ、暑いし」





唯音「ったく……透けてんだよ…」

小さな声でボソッと言うと
私の肩に上着をかけた

その時初めて、
白Tから下着が透けていることに気がついた


李杏「っ!!…ごめん、、……ありがとう」

唯音「別に…。」

李杏「……雨、強くなってきちゃったね」

唯音「確かに…。
すいません、こんな事になっちゃって」

李杏「どこに行きたかったの?
この雨じゃもう行けそうにないし、教えてよ」

唯音「…もう少し行ったところに、
見せたい景色があって…」

李杏「そうだったんだ」

唯音「最後だから…一緒に見たかったな」

李杏「…これもまた…良い思い出ってことで。」




唯音「……あの、隣、行ってもいいですか?」


返答する前に
彼は座ってる私の横に向かってきた


互いに何も言わずに
横並びで座った


肩が触れている部分が
妙に熱い


李杏「やっぱ暑いから上着返す!!
……だからコッチ見ないで。」


目を合わせたらダメだ。


今、彼と目を合わせたら


絶対にスイッチが入ってしまう__。

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