デリヘル物語
第3章 take3
「やっぱりよくわからないっすよ……。でも、その宇宙の法則とやらが許さない――って、じゃあ、もし許さないとしたらどうなってしまうんですか?」
「まあ、それは俺にもわからないが、もし仮に未来が変わってしまった結果、とてもネガティブな出来事が起こるような事があれば、この世界がそれを許さずに………」そこまで、話すと谷崎は再び黙り込んだ。
「……んっ、どうしたんですか、谷崎さん?」
「すまないな、高橋くん。俺がこっちに来てしまった、ばっかりに……」と谷崎は神妙な面持ちで言った。
そんな彼の表情に戸惑いながらも僕は尋ねた。「なっ、どうしたんですか、急に……?」
「まだなんとも言えないが、けど、もしもきみの身に何かあったなら、それは間違いなく俺のせいなんだ。だから、すまない」
「いやいや、どういう事なのか僕にはまだ全然わからないっすよ。こっちの世界とかあっちの世界って……いったいさっきから何を言ってるんですか」
「まあ、もう、はっきり言ってしまうと、高橋くん、俺達はそれぞれ別の時空間で生きてる人間なんだ」
「別の時空間……って、まさか……そんな事って……」
「こっちの世界に来て――高橋くん、きみと出会えたのはとてもラッキーだった。まさかチャイムを押してきみが出て来るとは……だけど少々タイミングが悪かったのかもしれない――」
と真顔で谷崎が話している最中だった。突然聞き覚えのないアラームのような音が鳴り始めた。
ピピピピピピピピピピピピ……。
それは、どうやら谷崎の腕に巻かれた……時計?のようなものからだった。
「しまった……」突然、谷崎が声をあげた。
彼は腕に巻かれた時計?のようなものを見ながら、そのボタンを押してアラームを止めると「俺とした事が――時間の事をまったく気にしていなかった。これは、ちとまずいかもな……」そう言ってあからさまに焦り始めた。
「こ、今度は、どうしたんすか、いったい?」
「高橋くん、度々すまない。俺は、きみといれる時間が決まって―――」
と谷崎がまだ話している最中に、あの感覚が突然僕を襲った。時間が巻き戻る時の、あの感覚が――。