テキストサイズ

お題小説 labyrinth(心の迷宮)

第1章 ラビリンス(labyrinth)

 8

「あ…」
 ふと隣を見ると彼がいない。

 わたしは辺りを見回す…
「ふうぅ…」
 そんな吐息を吐きながらバスタオルを巻いた彼が浴室から出てきた。

「起こしちゃったかな?」
 わたしを見て爽やかな笑顔で訊いてきたのだ。

「うぅん、今起きたの…」
 わたしはまた再びの絶頂感による寝落ちをしたことに恥ずかしくなっていた。

 そしてふと時計を見るとまだ午前3時…

「まだ時間大丈夫なの?」
 彼は、何気に時計を確認したわたしを見てそう訊いてくる。

「うん、まだもう少し大丈夫」
 それよりも、まだ午前3時だということに少し驚いていた…
 だって体感的にはもっと時間が経ていたような感じがしていたから。

 それにまだ彼と一緒にいたいという不思議な昂ぶりの想いがあったから…
「あ、アナタは?」
 だから、つい、そう訊いてしまった。
 
「うん、まだいいかな、それにオレは時間になったら直接会社に行っちゃおうかなぁって…」

「そう…なんだ…」
 わたしは彼のその言葉に…
 男はいいなぁ、って思ってしまう。

 女のわたしが連チャンで同じ服を着て会社に行ったなら、いったい何を言われるか分からないから…

「実はオレもさぁ、さっき夢をみちゃってさぁ…
 たくさん寝汗かいちゃってさ…」
 すると彼がそう言ってきたのだ。

「え、ゆ、夢を?」

「うん、そう…
 なんかさぁ、こんなに気持ちが、あ、心がこう昂ぶった夜なんかは同じ夢をよく見るんだ」
 そして、そう言ってくる。

「え、あ…
 あ、それはわたしと同じ……」

「そうなの?」

「うんそう…
 わたしもいつも同じ様な夢を見ちゃうの…」

「それもさぁ、昔から、うぅん、小さい時からずぅっと同じ夢なんだよね…」

 あ、それもわたしと同じ…

「だけどね、決して悪夢ってわけじゃないんだけどさ…
 でもね、その夢を見た後はこう…なんていうかさぁ、その夢の余韻がさぁ…
 うーん…」

「まるで二日酔いみたいな…」
「まるで二日酔いみたいな…」

「あ…」

「え…」

 なんと、彼とわたしはほぼ同時に…
 同じ言葉を呟いたのだ。

 まるで二日酔いみたいな夢…

 決して悪夢ではない夢…

 そして彼も、心をザワザワと騒つかせる余韻の残る夢を見るという…

「え、ど、どんな夢なの?」

 わたしは彼に問う…



ストーリーメニュー

TOPTOPへ