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王都崩落

第1章 1

ㅤ転がった肉体に半身はなく、巨大な穴が空いていた。ただの弾丸で殺された訳でないことは、火を見るより明らかだった。

ㅤそしてそれが、人の力でないことも……。
ㅤ変貌した其れを眺め、私は唯溜息を吐き、紙煙草を咥え、火を点けた。

「​───寒いな、もう12月か」

「​───そう思うなら、服を着たらどうだい? ㅤヨーゼフ大尉」

ㅤ誰にともなく吐き出した言葉に、返ってくる声。声に答えるように、私は着ていた軍服を羽織った。

「​────随分お楽しみだったみたいだね。暗殺対象と寝るのは、君の趣味か何かかな?」

「​───其の方が相手が油断しやすくなるだけさ……」

「ぉお、怖ッ​───。大尉と寝る時は気を付けないとね」

「そうした日は来ないから安心するといい」

ㅤこうした対話も3度目となるが、不快感は抜けきれない。

ㅤ死体を挟み、何もない空間に向けて声を返す。

ㅤ相手は、人ではない。
ㅤ雇い主でもない。
ㅤ壁、だ。

ㅤ私は壁に向かって話している。そう思う方が心地が良かった。

ㅤ気が触れていた方がマシだ。
ㅤ​────こんな、世界は……。

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