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自殺紳士

第15章 Vol.15:空っぽの部屋

ぴんぽーん・・・

玄関のチャイムが鳴る。
一瞬顔をぱっと上げたが、ありえないことだと首を振る。

ぴんぽーん・・・

もう一度。
不思議なものだ。
死のうというのだから、こんなの無視すればいいのに、
なんとなく、対応しなきゃと思ってしまう。

これもまた馬鹿らしくて、苦笑が漏れる。

ドアスコープを覗くと、そこには見知らぬ青年がいた。

黒いスーツに黒いネクタイ
まるで葬儀屋だと思ってもう一度見たら、ネクタイは、かろうじて黒ってわけではなかった。

一体なんだ?セールスか?

ぴんぽーん・・・
ドアに寄った時、物音がしたのがいけなかったかもしれない。
向こうに、こっちがいるのがバレたみたいだ。

ぴんぽーん・・・

しつっこいな!
ガチャ、とドアを開ける。

「セールスならお断りだ!」

言い放って扉を閉めようとすると、男は身体を半身押し込んできた。

「ちょ・・・あんた!何を!」
「あ・・す、すいません。怪しいものじゃないんです!」

十分怪しい男は、見た目に反した弁明をしてきた。

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