テキストサイズ

自殺紳士

第15章 Vol.15:空っぽの部屋

俺とこの男は扉を挟んで5分以上に渡って、

出てけ!
 いや、そういうわけには・・・
警察呼ぶぞ!
 ちょ・・・少しだけお話を・・・
宗教もお断りだ!
 そうではなくてですね・・・

などと押し問答することになった。

俺は、なんとかこの奇妙な青年を押し返そうとしたが、
彼が最後に放ったセリフが事態を一変させた。

「だ・・・だってあなた、死ぬつもりでしょ!?」

扉を閉めようと押す力が、一気に抜けた。

なんで?・・・どうして?

「誰に・・・聞いたんだ?」

最初に思ったのは、
俺の噂を聞いて、死ぬんじゃないかと思ってやってきた警察官か何かか?
ということだった。

しかし、彼は自分は警察官でもなければ、
 ましてや宗教の勧誘でもない、と。
そして、まっすぐに俺の顔を見て

「あなたが、死ぬのを・・・止めに来たんです」

そう、言った。

なぜ、この青年は俺が死のうとしているのを知っていたのか
 なぜ、止めようとしているのか

何一つわからないまま、
 結局、俺は、この奇妙な男を部屋に招き入れてしまっていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ