
自殺紳士
第15章 Vol.15:空っぽの部屋
☆☆☆
「妻が・・・出ていったんだ」
いつしか、俺は、自分のことを話し始めていた。
それは、この奇妙な青年が、あまりにも静かにそこにいた、からかもしれない。
妻が高給取りの医師と不倫をしていたこと
自分はそれに無邪気にも全く気づいていなかったこと
そして、それを責めたら、
あっさりと、娘を連れて出ていったこと
がらんとした部屋、
それは俺そのものだ、そう思った。
一生懸命やってきたつもりだったけど、
今、俺の手には、何一つ、残っちゃいない。
空っぽだったんだ。最初から。
はは・・・
ははは・・・
笑えてきた。
あまりにも馬鹿らしくて、
笑えて・・・涙がにじんだ。
こんな馬鹿な話あるか・・・あるかよ・・・
「俺が・・・俺が悪いってよぉ・・・」
言葉が、せきを切って溢れ出す。
皆が、友人が、同僚が、上司が、親が、社会が、
出ていかれたお前に非があるんじゃないかと
不倫せざるを得ないほどの何かをしたんだろうと、
愛情が足りなかったんじゃないかと、
男としての甲斐性がなかったんじゃないかと、
頼りがいがなかったんじゃないかと、
稼ぎが足りなかったんじゃないかと、
奥さんも苦しかったんだよと、
あなたも前を向かなきゃいけないと、
男なんだから、しっかりしなさいと、
空っぽの部屋にいる、空っぽの俺に、
これでもかと詰め込まれ続ける汚泥のような言葉に
俺は、もう、耐えられなかったんだ。
「妻が・・・出ていったんだ」
いつしか、俺は、自分のことを話し始めていた。
それは、この奇妙な青年が、あまりにも静かにそこにいた、からかもしれない。
妻が高給取りの医師と不倫をしていたこと
自分はそれに無邪気にも全く気づいていなかったこと
そして、それを責めたら、
あっさりと、娘を連れて出ていったこと
がらんとした部屋、
それは俺そのものだ、そう思った。
一生懸命やってきたつもりだったけど、
今、俺の手には、何一つ、残っちゃいない。
空っぽだったんだ。最初から。
はは・・・
ははは・・・
笑えてきた。
あまりにも馬鹿らしくて、
笑えて・・・涙がにじんだ。
こんな馬鹿な話あるか・・・あるかよ・・・
「俺が・・・俺が悪いってよぉ・・・」
言葉が、せきを切って溢れ出す。
皆が、友人が、同僚が、上司が、親が、社会が、
出ていかれたお前に非があるんじゃないかと
不倫せざるを得ないほどの何かをしたんだろうと、
愛情が足りなかったんじゃないかと、
男としての甲斐性がなかったんじゃないかと、
頼りがいがなかったんじゃないかと、
稼ぎが足りなかったんじゃないかと、
奥さんも苦しかったんだよと、
あなたも前を向かなきゃいけないと、
男なんだから、しっかりしなさいと、
空っぽの部屋にいる、空っぽの俺に、
これでもかと詰め込まれ続ける汚泥のような言葉に
俺は、もう、耐えられなかったんだ。
