
自殺紳士
第15章 Vol.15:空っぽの部屋
とうとう、ぼろりと、涙が出た。
こぼれた涙が、手の甲に落ちて、
俺は初めて、自分が、
泣くことすら許されていなかったと気づいた
そして、
それに気づいたら、
ボロボロと、ボロボロと、
泣くのが止まらなかった。
泣きながら、弱い自分に、また、涙が出た。
「情けねえ、俺にはほんとに、何もねえ・・・」
弱くて、情けなくて・・・だからか?
だから、出ていった?
だから、不倫した?
だから・・・?
「情け・・・なくなんてないです
辛いことあったのに、泣いたらダメなんですか?」
青年は、言った。
「上手くいかなくて
信じていた人に裏切られて
・・・辛くて、泣いて、何がいけないんですか・・・?」
不思議な青年は、不思議なことを言った。
「辛いときに、辛いって言えないのなんて、
絶対、絶対におかしいです
裏切られた方が悪いなんて、
そんなの、絶対に、おかしいです」
被害者ぶらないで、相手を許して
前を向いて、強く生きて
悲しんじゃいけない、泣いちゃいけない
そんな、言葉が
当たり前だと思っていた言葉が
どれだけ辛く響いていたのか。
青年の言葉は、不思議ではなかった。
奇妙なのは、おかしいのは、
痛いことを、痛いと言えない
言ってはいけないという
この世界なのだということに
俺は、ようやく、思い至った。
大切なものを失って、
裏切られて、奪われて、
悲しくて、悲しくて、悲しくて、悲しくて、
俺は、泣き続けた
空っぽの部屋が、俺の涙でいっぱいになるまで
そして、呆れるほど長いこと、
その青年は、俺のそばに居続けてくれたのだった。
こぼれた涙が、手の甲に落ちて、
俺は初めて、自分が、
泣くことすら許されていなかったと気づいた
そして、
それに気づいたら、
ボロボロと、ボロボロと、
泣くのが止まらなかった。
泣きながら、弱い自分に、また、涙が出た。
「情けねえ、俺にはほんとに、何もねえ・・・」
弱くて、情けなくて・・・だからか?
だから、出ていった?
だから、不倫した?
だから・・・?
「情け・・・なくなんてないです
辛いことあったのに、泣いたらダメなんですか?」
青年は、言った。
「上手くいかなくて
信じていた人に裏切られて
・・・辛くて、泣いて、何がいけないんですか・・・?」
不思議な青年は、不思議なことを言った。
「辛いときに、辛いって言えないのなんて、
絶対、絶対におかしいです
裏切られた方が悪いなんて、
そんなの、絶対に、おかしいです」
被害者ぶらないで、相手を許して
前を向いて、強く生きて
悲しんじゃいけない、泣いちゃいけない
そんな、言葉が
当たり前だと思っていた言葉が
どれだけ辛く響いていたのか。
青年の言葉は、不思議ではなかった。
奇妙なのは、おかしいのは、
痛いことを、痛いと言えない
言ってはいけないという
この世界なのだということに
俺は、ようやく、思い至った。
大切なものを失って、
裏切られて、奪われて、
悲しくて、悲しくて、悲しくて、悲しくて、
俺は、泣き続けた
空っぽの部屋が、俺の涙でいっぱいになるまで
そして、呆れるほど長いこと、
その青年は、俺のそばに居続けてくれたのだった。
