
自殺紳士
第16章 Vol.16:風のふくところ
【風のふくところ】
失職して
フラフラと街を歩いていた
行き交う人すべてが
自分よりも優秀で
自分は限りなく
ダメな人間のように思われた
買い物をしている人はきっと
僕よりも仕事ができるのだろう
あの薬局の店員さんはきっと
僕よりもずっと話上手なのだろう
小さい子の手を引いている父親らしき男性
きっと僕よりずっとずっと
学歴も年収も高いのだろう
天を仰ぐと
一点の曇もない青空だった
自分がどんなに惨めでも
世界は全く関係なく回っていた
まるで、自分だけがこの明るい世界に乗り遅れてしまったようで
それは、とてもじゃないけど
取り返しがつかないことのように思えた
歩きまわっているうちに日が暮れた
夜になっても僕は歩き続けた
行く場所なんてない
会うべき人もいない
自分が存在してる意味なんて
まるでない
あゝ 死んでしまおうか
僕はいつしか10階ほどの高さのある
古いマンションの屋上に立っていた
何かの本で
本当に死ねるのは7階以上
と聞いたことがある
それからすれば十分な高さ
遠くにキラキラと高層ビルが見える
風がふわりと頬を撫でる
見下ろすと
地面はまるで奈落の底のようだった
それはそうだろう
実際に、そこは死の世界につながっているのだから
失職して
フラフラと街を歩いていた
行き交う人すべてが
自分よりも優秀で
自分は限りなく
ダメな人間のように思われた
買い物をしている人はきっと
僕よりも仕事ができるのだろう
あの薬局の店員さんはきっと
僕よりもずっと話上手なのだろう
小さい子の手を引いている父親らしき男性
きっと僕よりずっとずっと
学歴も年収も高いのだろう
天を仰ぐと
一点の曇もない青空だった
自分がどんなに惨めでも
世界は全く関係なく回っていた
まるで、自分だけがこの明るい世界に乗り遅れてしまったようで
それは、とてもじゃないけど
取り返しがつかないことのように思えた
歩きまわっているうちに日が暮れた
夜になっても僕は歩き続けた
行く場所なんてない
会うべき人もいない
自分が存在してる意味なんて
まるでない
あゝ 死んでしまおうか
僕はいつしか10階ほどの高さのある
古いマンションの屋上に立っていた
何かの本で
本当に死ねるのは7階以上
と聞いたことがある
それからすれば十分な高さ
遠くにキラキラと高層ビルが見える
風がふわりと頬を撫でる
見下ろすと
地面はまるで奈落の底のようだった
それはそうだろう
実際に、そこは死の世界につながっているのだから
