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アダージョ・カンタービレ

第3章 フロム貞子

……の、つもりだった。

引き抜こうとしてるのに、のどにカニューレがひっかかる。少しは抜けたようだけど、まだまだだ。
もっと力を入れないとっ……!

ビーッビーッ!

くっそ、忌々しい呼吸器アラームめ。
気づかれちまうじゃねぇか!

「なにやってるの!? あっ、あなたっ!!」

それみろ……。

──俺は救急搬送され、一命をとりとめてしまった。

あとでわかったこと。
気管カニューレには、簡単には抜けないようストッパーがついてるんだと。。

。。俺の願いは叶わなかった。


まだ俺は、生きなきゃダメなのか?
こんな状態で
生きているのは、なんのため?

わからない。
しいて言えば、これでもかってくらいの辛苦を味わい続けるため?
両手首には抑制帯をつけられ、これまでのささやかな自由も奪われた。
こんな仕打ちをうけるほどに俺は、罪深い人間なのか?

病院のベッドの上、横にはテレビ。自宅よりも更に無機質になった室内をじっと見ながら、答えを探した。


その夜のこと。
ついてないはずのテレビの画面がジジジと動いた。

ん?と思って目をやると、暗い画面に文字が浮かんでいた。

『キャンプへのお誘い』

キャンプ?
なんだよ、そんなの。俺とは無関係…と思った次に、現れた文字

ジジジ

『費用はあなたの生命です。

 出席しますか?

         貞子より』

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