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キセキ

第1章 Vol.1〜最期の手紙

【Vol.1:The girl conveys her love through letters】

「あの娘は死んだよ。15年前。病気でさ。」
女は言う。

「そうか」
男は座って呟いた
グラスのウィスキーを一気に呷る

「まだ、ろくに働いてないのかい?」
「いや、働いたさ。この20年、ずっと真面目にやっている」
「その飲んだくれのなりでかい?」
女の皮肉交じりの言葉に、
男は薄く笑った

「働いてるなら戻って来たってよかったじゃないか」
女はため息まじりに言った

「俺が・・・許されるわけがねえ
 黙って出ていったんだ
 でも、あの娘の寝顔が、
   声がいつまでもいつまでも、
 ここに張り付いていやがる」
男は自分の頭を指差した

手を力なく床に落とす

「でも・・・もう、死んじまったんだな」
「カミサマよう・・・」
男は俯いた

「今日は、これだけ渡しに来たよ」
女は男に一通の封書を手渡した
宛先には男の名前が書いてあった
男は黙って受け取る

手紙を読んだ男は手を震わせた

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