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キセキ

第3章 Vol.3〜雨の診察室

ー先生は、ボクの頭に手を置きました。温かい、大きな手でした。
 そして、ゆっくり、ことさらゆっくり、こう言いました。

 「君のママは、君のことが大好きだよ。
   そして、大丈夫。絶対に良くなるから。」

ーボクの中の怖さが、薄くなりました。
 先生は『大丈夫』とおっしゃいました。
 ずっと、どうして良いかわからなかったことを、
  どうしようもなかったことを。
 先生は『大丈夫』とおっしゃったのです。

ー母はその後、退院して家に戻ってきました。
  たしかに以前の母そのものではなかったけれども、
  ちゃんと帰ってきました。
 その後、先生は別の病院に移られ、母の主治医は別の先生に変わりました。
 残念ながら母の病気は何度も再発しました。
 そのたびにボクは怖くなりましたが、先生の言葉を思い出しました。
 先生は、確かに『大丈夫』とおっしゃったのです。

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