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キセキ

第8章 Vol.8〜ありがとう

その後、短い入院が何度か続いた
 短い入院のたびに、父は痩せていったようだった
薬の副作用が強いということで
あまり外を出歩くこともなくなってきた

やせ細り、顔色が悪くなっていくのを見て、
 私は父が死んでしまうのではないかと心配していた

ある日、
 父が4回目の入院をしているときだった

父は私を枕元に呼んだ
無精髭が伸び、
口臭がひどかったのを覚えている
父は私にそっと言った

『お父さんは、キセキを起こすぞ・・・』

その口調は何か決意したような様子だった

4回目の入院はこれまでで一番長かった、
退院したとき、父の肌色はだいぶ白くなり、
頬はコケていた
副作用のせいで、髪の毛が抜けてしまったようで
 黒のニット帽を家の中でもかぶっていた
食事もだいぶ少量になっていた

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