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キセキ

第8章 Vol.8〜ありがとう

【Vol.8:Your final wish】

私が物心ついたときから父と母は仲が悪かった

私が10歳になる頃には
父と母はほとんど家で口を利かなくなっていた

父が何かを言うと
母はすぐに怒鳴り返していたので、
父は、何も言えなくなっていったのだと思う

何が気に入らないのか、母は事あるごとに
 父の目の前で父のことを悪く言った
その言葉を聞くたびに
父は悲しそうな目をしていた

そんな生活が続いたある日
 父の病気がわかった

ガン、だった

『最近はちゃんと治療すれば治る病気だから』

私を安心させようと、父は笑ってそう言った

 母は父の診察に同行することはなかったし、
私を行かせることもなかった

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