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キセキ

第10章 Vol.10〜私の居場所

瞬く間に数年が過ぎた

あたしはやっと事務の正社員の仕事につくことができた
薄給ではあったが、ちゃんとした正社員扱いだった
初めて安定して明日行くところがある生活は
どれだけあたしを心強くしただろうか

その仕事が決まった日も
あたしはピージ・ブリーシスに行った
マスターはあたしの話を聞いて一緒に喜んでくれた

それからも、ほとんど欠かさず
週に1回は店に通った

ピージ・ブリーシスという名が
ギリシャ語で『水飲み場』という意味だと教えてもらったのは
だいぶ経ってからだった

マスターは別に気の利いたことを言うわけではないし
コーヒーもココアも普通の味だった

ただ、あたしにとって
いつも、そこにいる誰かがいたのは
いつでも、行くことができる場所があったのは
生まれて初めてだった

いつの間にか
吐き気も頭痛もなくなっていた
夜中に一人で泣くことも少なくなっていた

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