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キセキ

第14章 Vol.14〜つごもりに

紅白をぼんやりと横耳で聞きながら、彼女が立つキッチンをぼんやり見ていた。
そばはすぐに茹だってきた。
暖かく湯気が立つ温蕎麦に
三つ葉とかまぼこ、鶏肉が入っていた。

こんなところも手を抜かない。
僕だったら、きっとざるそばだ。

一緒に食べたそばは暖かくて美味しかった。

「ねえ、来年も、こうしよう」
食べ終わると彼女は言った。僕の目をぐいと見つめてくる。
嬉しいときの彼女の癖だった。

「来年も、そのまた次の年も。12月31日は家で、一緒に紅白見よう。
 お蕎麦を食べて、除夜の鐘を聞こう」

「そんなんでいいの?今年はちょっとだめだったけど、普通、でかけたりしない?」

実際、僕らは去年、カウントダウンイベントに参加していた。

彼女はぶんぶんと頭を振る。
「いいの。これでいいの・・・」

そして、肩を寄せてきた。ふわりと優しい匂いがした。

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