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キセキ

第14章 Vol.14〜つごもりに

【Spending time together】

「ねえ、キセキって信じる?」
彼女は藪から棒に声をかけてきた。

12月31日の夜
こたつに入って紅白を見ていた。
僕たちは今年の夏に結婚した。
入社したばかりの会社。彼女は違う部署の先輩だった。
1年ほど付き合って、結婚した。
平凡な結婚だった。

彼女と過ごす初めての大晦日は、
特に旅行に行くこともできない。
今年はそういう年だった。

特にすることもなく、紅白歌合戦を二人で見ていた。

「キセキ?」
僕は首を傾げた。
信じるかどうかといえば、僕はあまりそういうのは信じない。
年末年始に神社にお参りするくらいの信心はあるが、
それでなにかキセキが起こるとは思っていなかった。

ーふふん

彼女は意味不明な笑みを浮かべる。
「そうだ!年越しそば作らなきゃ」

彼女はこういう季節モノが好きだった。
5月5日に菖蒲湯に入るのは知っていたけど、
冬至にゆず湯に入るのは、彼女と暮らすようになって初めて知った。

明日はきっと、お雑煮が出てくるだろう。

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