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キセキ

第17章 Vol.17〜似た者同士

【Vol.17:Similar father and daughter】

「お父さんはどうなの?」
画面の向こう、娘の絵梨花が尋ねてくる。
2つの画面が並んだPCのディスプレイ。

ひとつは俺が写っている。背景はやたらトロピカルなハワイの景色を合成してる。
もうひとつには娘がいる。向こうで借りているアパルトメントの部屋が写っていた。

随分、世の中便利になったものだ。
こんな風に地球の裏側にいる娘と、顔を見て話せるのだから。

ま、その御蔭で苦労するところもあると言えばあるんだがな。

俺は口角を上げて見せる。
「おうよ。元気だよ、元気すぎてな、困ってるくらいだぜ?」
「本当に・・・?ちゃんと静江おばちゃんのいうこと聞いてる?」
「あったりまえだぜ。あ、そうそう、今度な、ちょいデートしてくるからよ」
「デートぉ?」
絵梨花が呆れたような顔をする。

そりゃそうだろう。
妻が男作って逃げて10年、男手ひとつで育ててきた娘からすれば、いい年して何言ってんだ・・・と思うだろうな・・・

ま、計算通りだな。

「お前の方こそどうなんだ?オーディション、明日か?」
「あ、うん、明後日。最終選考ね。もう、言わないでよ!緊張しちゃうじゃない」
「わりいわりい・・・いや、何、な・・・」

不覚にもここで言葉に詰まってしまった
25歳、単身米国に渡って好きなダンスの道を歩んで・・・とうとうあこがれの舞台のチケットに手が届くまでに・・・

そう思うと、これまでの娘との思い出が一気に頭の中を駆け巡る。

「何?お父さん、泣いてるの?」
「ば・・・そんなことねえよ」
「まだ早いって。受かってないんだよ?オーディション」

泣いてねえ、ともう一度言うと、娘は笑っていた。
昔から変わらない、柔らかな優しい笑顔。

「ほら、今、そっちは夜中だろ?はよ寝ろ」
「あ、うん・・・そうだね。お父さん・・・本当に健康には気をつけてね」

いつもの会話

「大丈夫だって、元気すぎるほどだって言ってんだろ!」

そろそろ・・・限界だ・・・。

「はよ寝ろ、美容に悪いぞ!」
「はいはい・・・じゃあ、また来月ね」

来月・・・そうだ、お前はそう思っていろ・・・
大丈夫、迷惑はかけねえよ。

「ああ、来月・・・な」

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