キセキ
第17章 Vol.17〜似た者同士
俺は、精一杯の笑顔を作った。
変な間ができたせいかもしれない。娘が若干眉をひそめた。
しかし、俺がことさらにブンブンと手を振ると、画面の向こうの娘も小さく手を振って応える。
そして、そこで、ぷつりと画面が切れた。
はあ・・・・・
「ぐうう・・・ぅ」
胸を押さえる。額から脂汗が滲む。
危なかった・・・。
「兄さん・・・」
『病室』の俺のベッド、その足元あたりに椅子をおいて妹の静江が座っている。
お節介なことに、心配そうに声を掛けてくる。
「あ・・・ああ・・大丈夫だ」
本当は静江にすら見せたくなかった姿だったが、どうしても彼女に頼らざるをえないことがあった。
「化粧・・・取るよ」
「ああ、頼む」
静江がコットンで顔を拭ってくれる。
1時間ほどかけて彼女に施してもらった化粧が落ちていった。
落とすのはあっという間だな・・・
顔をなぞると、コケた頬の感触がある。
「じゃあな」
あまりこの顔を見られたくはない。静江に手を振って部屋から出るように促した。
「兄さん、本当にいいの?絵梨花ちゃんに言わないで」
「何度も言ったろ?いいんだよ。あいつは今、大事な時期なんだからよ」
「でも・・・せめて知らせるくらいは」
「馬鹿野郎!知らせたらあいつはすっ飛んできちまう。そしたらせっかくの夢のチケットが台無しだ。あいつはな、あいつは・・・自分より人のことを優先しちまう・・・そんなやつなんだよ・・・」
何年俺が、あいつの父親やってると思ってんだ・・・
最後にそれだけ言うと、もう会話は終わりだと言わんばかりに、俺は静江に背中を向けるようにしてベッドに潜り込んだ。
変な間ができたせいかもしれない。娘が若干眉をひそめた。
しかし、俺がことさらにブンブンと手を振ると、画面の向こうの娘も小さく手を振って応える。
そして、そこで、ぷつりと画面が切れた。
はあ・・・・・
「ぐうう・・・ぅ」
胸を押さえる。額から脂汗が滲む。
危なかった・・・。
「兄さん・・・」
『病室』の俺のベッド、その足元あたりに椅子をおいて妹の静江が座っている。
お節介なことに、心配そうに声を掛けてくる。
「あ・・・ああ・・大丈夫だ」
本当は静江にすら見せたくなかった姿だったが、どうしても彼女に頼らざるをえないことがあった。
「化粧・・・取るよ」
「ああ、頼む」
静江がコットンで顔を拭ってくれる。
1時間ほどかけて彼女に施してもらった化粧が落ちていった。
落とすのはあっという間だな・・・
顔をなぞると、コケた頬の感触がある。
「じゃあな」
あまりこの顔を見られたくはない。静江に手を振って部屋から出るように促した。
「兄さん、本当にいいの?絵梨花ちゃんに言わないで」
「何度も言ったろ?いいんだよ。あいつは今、大事な時期なんだからよ」
「でも・・・せめて知らせるくらいは」
「馬鹿野郎!知らせたらあいつはすっ飛んできちまう。そしたらせっかくの夢のチケットが台無しだ。あいつはな、あいつは・・・自分より人のことを優先しちまう・・・そんなやつなんだよ・・・」
何年俺が、あいつの父親やってると思ってんだ・・・
最後にそれだけ言うと、もう会話は終わりだと言わんばかりに、俺は静江に背中を向けるようにしてベッドに潜り込んだ。
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