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キセキ

第17章 Vol.17〜似た者同士

末期の膵臓がん

会社の検診で引っかかって、精査を受けたときにはすでにステージ3だった。つい先日、余命は1か月、と言われてしまっている。

今も、モルヒネを大量に投与して痛みを抑えていなければ意識を保つことすら難しい。

アメリカにいる娘とは月に1度オンラインで話をするのが常だった。
でも、そんな娘ももう大人だ。
それに、今、夢にまで見た舞台のチケットを手に入れようとしている。

だから、俺は決断したのだ。

娘に知らせない、と。

顔色が悪くなっているのを悟られないように、妹に化粧を頼んだ。
背景は合成でなんとでもなる。ここが病院であるということを知られないようにすればいい。

そうやって準備をした会話が、さっき、終わった。
多分、あれが最後の会話だ。

大きく・・・なったな・・・

年を取ったせいのなのか、病気で弱っているせいなのか
涙腺が脆くなっていけない。

うとうととしながら俺は、ぽろぽろと、涙を流していた。

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