
コーヒーブレイク
第1章 日常が壊れるとき
・
目の疲れを覚えて、書類から目を上げると、久美はうつむいていた。
「久美」
「すまん」
予想していたかのような即答だった。
「後輩からの相談のメールへの返事なんだ。見逃してくれ」
言いながら、ガラケーの操作はやめない。
ここ、滝見女子高では、一切のモバイルは下校するまでロッカーから出さないことになっている(とはいえ、休み時間にこっそりチェックしている光景は普通に見られた)。
しかし、いまの久美は、放課後の生徒会室で生徒会長の私の目の前で、メールを書くという暴挙に出ているわけだ。
イヤミの一つも言ってやる。
「風紀委員長の顔が見たいわ」
「いくらでも見ろ」
そう、久美は風紀委員長だった。三年生に進級して、柔道部の主将&部長の座は譲ったが、風紀委員長の地位には10月の選挙までとどまる(任期については、生徒会長の私も同じだ)。
なお、久美はこんな男言葉だが、れっきとした女子高生であることを付記しておく。
「罰として、公園でコーヒーおごりなさい」
「やだね。あれ見ろ」
久美はガラケーを入口の方に向けた。そこには、「今日のコーヒー当番は、規子|久美」と書かれたハート形の画用紙があり、【規子】の名前の上にダーツの矢が刺さっていた。
「久美が矢を動かしたんでしょ」
「背負い投げかけられても、同じこと言えるか?」
これも、用意していたかのような即答だった。
目の疲れを覚えて、書類から目を上げると、久美はうつむいていた。
「久美」
「すまん」
予想していたかのような即答だった。
「後輩からの相談のメールへの返事なんだ。見逃してくれ」
言いながら、ガラケーの操作はやめない。
ここ、滝見女子高では、一切のモバイルは下校するまでロッカーから出さないことになっている(とはいえ、休み時間にこっそりチェックしている光景は普通に見られた)。
しかし、いまの久美は、放課後の生徒会室で生徒会長の私の目の前で、メールを書くという暴挙に出ているわけだ。
イヤミの一つも言ってやる。
「風紀委員長の顔が見たいわ」
「いくらでも見ろ」
そう、久美は風紀委員長だった。三年生に進級して、柔道部の主将&部長の座は譲ったが、風紀委員長の地位には10月の選挙までとどまる(任期については、生徒会長の私も同じだ)。
なお、久美はこんな男言葉だが、れっきとした女子高生であることを付記しておく。
「罰として、公園でコーヒーおごりなさい」
「やだね。あれ見ろ」
久美はガラケーを入口の方に向けた。そこには、「今日のコーヒー当番は、規子|久美」と書かれたハート形の画用紙があり、【規子】の名前の上にダーツの矢が刺さっていた。
「久美が矢を動かしたんでしょ」
「背負い投げかけられても、同じこと言えるか?」
これも、用意していたかのような即答だった。
