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コーヒーブレイク

第4章 十字架を背負うとき

そのあとのことは、正確に思い出せない。
たくさんのことが起こりすぎた。

父の遺体の確認には行った。

あとは、隣県に住む父の兄とお嫁さんが、自営の米穀店を臨時休業にして、来てくれて、各方面の処理に当たってくれた。

私自身は、警察へ2回だけ行ったと記憶している。父の常習的な飲酒運転を諫めなかった理由は、だいたい判明していたから、私から訊くことも少なかった。
ただ、DVの証拠として、私の体についた傷の写真は必要だった。
お嫁さんの立ち会いのもと、私の全裸が撮影されたが、恥ずかしいとも思わなかった。

どうしても、あの女子高生には謝りたい。許されなくても、謝らなければならない。
そんな私を、父の兄は、とにかく今はやめろ、と諭した。
遺族感情という言葉で説明されなくても、それは私にもよくわかっていた。
それでも、謝らないわけにはいかなかった。

新聞のおくやみ欄を見て、お通夜に行った。父の兄に知られてはならなかったから、香典袋は途中で買った。

中学の制服を着ていったことは覚えている。

私は高校に行けないんだな、最後の制服になるんだな、
なんて考えたことも覚えている。

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