
コーヒーブレイク
第1章 日常が壊れるとき
久美が立ち上がる。
「安全に停めてよ」
「わかってる」
しかし、次の瞬間──
別のベンチでスマホを見ていたOL風の女性が不意に立ち上がった。そのまま、スマホから目を上げずに歩き出す。
叫ぶ間もなかった。
赤い自転車は彼女にぶつかった。
公園の広さがアダとなり、それなりのスピードが出ていたところに、突然の衝撃ではひとたまりもない。
二人とも地面に倒れた。
どちらかのスマホが、信じられないほど遠くへ飛んだ。
久美は走り出していた。もちろん、私も。ブラバンの連中も。
ブラバンの連中が一番早く“現場”に着いた。そういう位置関係だったのだ。
しかし、オロオロと見ているだけのようだ。情けない。
“現場”に到着した久美が一喝する。
「看護科はいないのか!?」
「はいっ」
二人が返事した。
すぐさま倒れているOLのそばにしゃがみこむ。一人は二年生だ。なんとかなる。
「救急車呼びます!」
一年生のポケットから、ロッカーに入っているはずのスマホが現れた。
「落ち着いて、確実に伝えるんだ」
久美の指示が飛ぶ。
「西田先生、呼んでこい!」
もう一人の二年生が指示を出し、すぐに一年生が二人走り出した。
「教頭も、校長も、なるべくたくさん呼ぶんだ!」
その二人の背中に、久美の指示が付け加わる。
OLの方は、右手首を左手でおさえ、しゃがみこんでいるが、看護科の生徒とは会話できているようだ。
土に汚れたスーツや、左肘の出血が痛々しい。
一方、赤い自転車の生徒のほうは、尻餅をついたような姿勢で固まっている。
ブラバン部員が声をかけるが、反応がない。完全に上の空だ。
仕方なく、ブラバン部員二人がかりで立たせ、(さっきまでOLがいた)ベンチに座らせた。
半袖の制服だから、むき出しの腕や脚に傷を受けているのがわかるが、深刻な傷ではなさそうだ。
そこまで観察して、私は自分のガラケーを取り出した。
緊急時につき、生徒会長も校則を破らせていただく。
「どこへかける?」
さっそく、久美がとがめた。
「警察」
当たり前のように、私は答えた。
「安全に停めてよ」
「わかってる」
しかし、次の瞬間──
別のベンチでスマホを見ていたOL風の女性が不意に立ち上がった。そのまま、スマホから目を上げずに歩き出す。
叫ぶ間もなかった。
赤い自転車は彼女にぶつかった。
公園の広さがアダとなり、それなりのスピードが出ていたところに、突然の衝撃ではひとたまりもない。
二人とも地面に倒れた。
どちらかのスマホが、信じられないほど遠くへ飛んだ。
久美は走り出していた。もちろん、私も。ブラバンの連中も。
ブラバンの連中が一番早く“現場”に着いた。そういう位置関係だったのだ。
しかし、オロオロと見ているだけのようだ。情けない。
“現場”に到着した久美が一喝する。
「看護科はいないのか!?」
「はいっ」
二人が返事した。
すぐさま倒れているOLのそばにしゃがみこむ。一人は二年生だ。なんとかなる。
「救急車呼びます!」
一年生のポケットから、ロッカーに入っているはずのスマホが現れた。
「落ち着いて、確実に伝えるんだ」
久美の指示が飛ぶ。
「西田先生、呼んでこい!」
もう一人の二年生が指示を出し、すぐに一年生が二人走り出した。
「教頭も、校長も、なるべくたくさん呼ぶんだ!」
その二人の背中に、久美の指示が付け加わる。
OLの方は、右手首を左手でおさえ、しゃがみこんでいるが、看護科の生徒とは会話できているようだ。
土に汚れたスーツや、左肘の出血が痛々しい。
一方、赤い自転車の生徒のほうは、尻餅をついたような姿勢で固まっている。
ブラバン部員が声をかけるが、反応がない。完全に上の空だ。
仕方なく、ブラバン部員二人がかりで立たせ、(さっきまでOLがいた)ベンチに座らせた。
半袖の制服だから、むき出しの腕や脚に傷を受けているのがわかるが、深刻な傷ではなさそうだ。
そこまで観察して、私は自分のガラケーを取り出した。
緊急時につき、生徒会長も校則を破らせていただく。
「どこへかける?」
さっそく、久美がとがめた。
「警察」
当たり前のように、私は答えた。
