
スイーツ・スイーツ
第5章 真犯人はここにいる
鏡子のキャミなんて、初めて見たな。
――いやいや、違う。そうじゃなくて。
この違和感は何なのだろう。なぜか鏡子から贖罪の真剣さが感じられないのだ。
映画女優がシナリオ通りに脱いでいるような──
その時だった。
ドアがノックされて、入ってきたのは、松葉杖のお姉ちゃんだった。
◆
お姉ちゃんは、まず下着姿の鏡子に驚き、それから、私に深々と頭を下げた。
無言だったが、私にもわかってしまった。
真犯人は、お姉ちゃんだ。
◆
理恵子先輩と鏡子は、瞳が犯人でないなら、お姉ちゃん――佳奈恵先輩しか犯人になりえないと確信していたのだ。
そのうえで、鏡子は犯人になってやることにした。
私と佳奈恵先輩の関係を終わらせたくなかったから――。
私と鏡子の関係が終わるというリスクは考えないのか。
「すべては、なるようにしか、ならない」
制服を着ていきながら鏡子は言った。
おさまらなかったのは瞳で、姉として慕っていた佳奈恵先輩を許せず、
素手で一発だけ、“姉”の頬を打った。
(濡れ衣を着せられた恨みは含まれていないようだった。ま、自業自得だし)
それでも、お姉ちゃんは無言だった。
◆
ここで、同じく無言だった菫ちゃんが、「あれっ」と声をあげた。
「松山先輩、松葉杖ついてますよね。そんなんで、重たい入江先輩を突き飛ばせるんですか?」
重たくて悪かったな。
でも、それは正しい指摘だった。
思い出した。
確かに私は、“両手で”突かれた。
松葉杖のお姉ちゃんには、不可能犯罪のはずだ。
まさか、お姉ちゃんも犯人じゃないっていうんじゃ……。
「突き飛ばせるのよ。だって」
そう言って、お姉ちゃんは、松葉杖を椅子に立てかけ、乃木坂だか欅坂だかのナンバーを踊った。
きれいなターンにスカートが広がる。
……お姉ちゃん、治ってたんだ。
――いやいや、違う。そうじゃなくて。
この違和感は何なのだろう。なぜか鏡子から贖罪の真剣さが感じられないのだ。
映画女優がシナリオ通りに脱いでいるような──
その時だった。
ドアがノックされて、入ってきたのは、松葉杖のお姉ちゃんだった。
◆
お姉ちゃんは、まず下着姿の鏡子に驚き、それから、私に深々と頭を下げた。
無言だったが、私にもわかってしまった。
真犯人は、お姉ちゃんだ。
◆
理恵子先輩と鏡子は、瞳が犯人でないなら、お姉ちゃん――佳奈恵先輩しか犯人になりえないと確信していたのだ。
そのうえで、鏡子は犯人になってやることにした。
私と佳奈恵先輩の関係を終わらせたくなかったから――。
私と鏡子の関係が終わるというリスクは考えないのか。
「すべては、なるようにしか、ならない」
制服を着ていきながら鏡子は言った。
おさまらなかったのは瞳で、姉として慕っていた佳奈恵先輩を許せず、
素手で一発だけ、“姉”の頬を打った。
(濡れ衣を着せられた恨みは含まれていないようだった。ま、自業自得だし)
それでも、お姉ちゃんは無言だった。
◆
ここで、同じく無言だった菫ちゃんが、「あれっ」と声をあげた。
「松山先輩、松葉杖ついてますよね。そんなんで、重たい入江先輩を突き飛ばせるんですか?」
重たくて悪かったな。
でも、それは正しい指摘だった。
思い出した。
確かに私は、“両手で”突かれた。
松葉杖のお姉ちゃんには、不可能犯罪のはずだ。
まさか、お姉ちゃんも犯人じゃないっていうんじゃ……。
「突き飛ばせるのよ。だって」
そう言って、お姉ちゃんは、松葉杖を椅子に立てかけ、乃木坂だか欅坂だかのナンバーを踊った。
きれいなターンにスカートが広がる。
……お姉ちゃん、治ってたんだ。
