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国家特別プロジェクト

第13章 癒しのひととき、それぞれの午後

コンコン、と軽いノック音。
こころが「はーい!」とドアを開けると、低く落ち着いた声が廊下のにぎわいに混じって届いた。
「……まりかいます?」

一瞬で心臓が跳ねる。げんくんの声だ。廊下は掲示を見に行く人や、おしゃべりする女子の笑い声で賑やかで、足音や紙のめくれる音まで午後の明るさに溶けている。

「まりかいますよ、呼んできますね」
こころが振り向き、私に目で合図した。慌てて前髪を整え、胸の高鳴りを隠すようにして廊下に出る。

「どうしたの?」と首を傾げると、彼は視線を少しだけ逸らして言った。
「俺、整体の順番が一番最後でさ。……もし時間あるなら、ちょっと話さない?」

その一言に胸がぎゅっと熱くなる。わざわざ私を誘ってくれたのだと思うと、頬がじんと赤くなり、返す声も少し上ずってしまった。
「話そ😊」

背中でそっとドアが閉まる。外はルンルンなざわめきで満ちているのに、私の耳には自分の鼓動ばかりが大きく響く。肩が触れるか触れないかの距離で歩き出すと、靴音が二人分でひとつのテンポを刻んだ。
ふと私はチラッとこころの方を振り向く。するとこころは目を輝かせ、「あとで話聞かせてね♡」と口パクをした。その可愛い合図に思わず頬が緩んで、照れ隠しのように目をそらす🫣嬉しさを抱えたまま歩く足取りは自然と軽く、隣を歩く彼の温もりが、不思議とすぐそこにあるように感じられた。

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