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平凡OL、不慮の事故で異世界チート村長へ成り上がり

第17章 始まりの契約 〜千夏〜

商館を出ると、陽の光が眩しく降り注いでいた。
白いワンピースを着た少女は、初めて外の空気に触れたように目を細め、怯えるように足を止める。

「……人が、いっぱい……」
声は小さく震えていた。

しおんは彼女の細い手をそっと握り、落ち着いた声で言った。
「大丈夫だ。俺が隣にいる。安心しろ🤝🏻」

少女は少し驚いたように彼を見上げ、やがておずおずと頷いた。

二人が向かったのは仕立て屋だった。店主はすぐに気づき、にこやかに声をかけてくる。
「おや、これは新しい奴隷ですか。迎え入れられたのですね👏🏻」

「そうだ。凛のときと同じ一式を頼む。今回は紫で統一してくれ」
「かしこまりました😊」

しおんは少女へと向き直り、優しく告げる。
「お前の服をプレゼントする。数日後には仕上がるはずだ。楽しみにしてろ😉」

少女の瞳がわずかに揺れ、唇が震えた。
「……私に……服を……?😳」
信じられないというように呟いたが、その表情には小さな希望の光が差していた。

しおんは店主に銅貨19枚を支払い、同時に追加で注文していた凛のロンパース2枚も受け取り、店を後にする。



やがて噴水のある広場にたどり着いた。水しぶきが光を反射し、周囲は子供たちの笑い声で賑わっている。
しおんは石造りの縁に腰を下ろし、少女を隣に座らせた。

「お前に名前を与えようと思う🤔」
「……名前……?😳」
少女は目を丸くし、すぐに潤んだ瞳を伏せる。

しおんは真剣な眼差しで告げた。
「今日からお前は――千夏だ😁」

「……千夏……」
少女は震える声でその名を口にし、胸に手を当てる。
「わ、私に……名前が……」

「千の夏を越えてもなお、希望を失わず生きてほしい。いつか過去の涙を乗り越えて、あたたかな季節の中で笑えるように。そんな願いを込めてつけた☀️」

少女の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
だがその涙は、恐怖や絶望のものではなく――確かな喜びの涙だった。

「……千夏……はい……わたしは千夏です……ありがとうございます、ご主人様……🥹」

しおんは小さく頷き、彼女の頭を優しく撫でた。
その姿を、噴水の水音だけが静かに包み込んでいた。

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