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お嬢様は騎士に恋をする

第1章  память

幼い頃。お父様から私着きに護衛をと同い年の1人の男の子をそばに置かれた。その頃は彼はまだ騎士見習いで、実質執事のような存在だった。

「お嬢様、そろそろ起きてください」
「んん……ジュン……?まだ眠いわ」
「そうは言っても起きてくださらないと」

毎朝起こしてくれるが、私はとことん朝が弱い。いつも困らせてしまうのに、怒っているのを見た事が無い程だ。

それでも、一時期不機嫌になっていた頃がある。それは私に婚約者が紹介された時だった。

「ジュン、こちら私の婚約者のアルベド様よ」
「……ジュン・アルスノーツです。『マーリャ様』付の『護衛』です」
「……?」

いつもは私の事はお嬢様と呼んでいるのに、この時ばかりは執事と名乗るどころか護衛と自己紹介した。この後婚約が何故か破棄されるまでずっと不機嫌だった。

破棄された後はその前と同じように私の世話を焼いていたけれど、それから私に婚約話が来る事は無くなっていた。理由は分からない。

「お嬢様には自分が居れば良いですよね?」
「……そう、ね」

有無を言わさずそう言うジュンに、私は何も言えなくなってしまう。

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