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リーニエント

第5章 サンビタリア


何故かこの時、彼女の好奇心いっぱいの様子が愛らしく思えた。

「そんな気になるなら、もっと近くで見る?」

「へっ、うわっ!」

菊乃を膝上に抱き寄せると、突然の事態に未だ理解出来ずにしていた。


「二人きりって、珍しいよな」

桧瀧はほう、と熱を帯びた息を吐く。

何時もの彼は楽しくて、優しくて、ちょっとだらしのない兄の友人。
その程度の認識だった。
ヘアセットから身に着ける物まで、普段の印象とはかけ離れたストイックなビジネススタイル。
多感な年頃の少女には香るコロンでさえ、刺激が強い。
大人の色香を間近で見せ付けられ、菊乃は頬を染めることしか出来なかった。

彼女の様子に目ざとく気付いた桧瀧に、ちょっとした悪戯心が顏を擡げる。

「知ってるか?舌ピアス。これさ、気持ちいいんだって」

「気持ち、いい?」

「ん、試してみたくない?」

それは酒が入っていた所為だったのかもしれない。
数週間ぶりに顔を合わせた緊張感と、二人きりと言う空間に魔が差したのかもしれない。


「試す……?」

「そ。例えば、こう」

「ん……!?」

桧瀧に下唇を指の腹でなぞられ、ぞわりと彼女の背筋が震えた。

「舌入れねーと、解んねぇけど」

「え、やだ」

これからされる事を察し、否定するように頭を振る。

「なんだ、初めて?」

「違う、けど」

「ふうん、どっちでもいーけど」

嫌がってはいたが、自身の腕の中からは逃げない。
桧瀧はほくそ笑むと、そのまま彼女の唇に吸い付いた。

「んぅっん、ふぅ」

重なる隙間から漏れる愛らしい声は、まるで強請られているようだった。
彼は汗ばみ始めた身体を冷ますように、襟元の釦を一つ二つ外す。

「あ、はっ……こわい」

「怖いって、俺の事?それとも、ピアス?」

「違くて……気持ちよくって」

恍惚の表情を浮かべ、自身の唇を指でなぞる仕草は思ったよりも下半身にクる。


「へえ、ガキの癖に」

「あっ…んんう」

「ん…っ俺もハマりそ……」

皮膚同士の吸い付く感触は、確かに気持ちが良い。
桧瀧は片隅で考えながら、確かめる様に再び堪能する。


「や、桧瀧……も…いー」

「…ん、ダメ。はむっ」

「むっ……んんうー」

細腰に腕を回し、引き寄せる。
開いた唇の隙間から、ピアスの存在を誇示させるように擦り付けた。


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