リーニエント
第5章 サンビタリア
「ふあっ桧瀧、しつっこい」
「えー、嫌?」
「…っやだ、狡いんだもん!」
両肩に置いた手に力を入れた菊乃は離れようと、身体を捩る。
「ずるい?」
宥めるように背中をさすりながら、少女のフードが付いたスウェットワンピースから覗く太腿へ手をかけた。
「なにしてっ!やあ……」
「何が狡い?」
桧瀧の指先が裾の中へ入っていく様子に、彼女の息が上がる。
目つきが光ったように見えたのは、彼の目尻近くに空けられたピアスだろうか。
菊乃は無言の圧に屈伏してしまった。
「もう!だって、忘れられなくなるかもしれないじゃんっ」
「……俺?」
目元を赤くして、こくりと頷く。
「上手すぎるのっ」
吐き落とすように呟くと、羞恥で悔しそうに唇を噛む。
ああ、やっぱり可愛いかもしれない。
桧瀧は菊乃に対して芽生え始めた気持ちに、高鳴った。
「なんか、その言葉良いかも。このまま付き合う?」
「やだ、いい加減な男嫌いだもん」
「いい加減は言い過ぎだって。ほら、……ん」
「んうう……あふ」
再び擦れ合う粘着質な水音。
ぶつかるピアスの振動が、桧瀧の情炎を掻き立てて行く。
「ね、気持ちいーの。ずっとしたくない?」
「うう…あっ!彼女!確かいたよね?」
「とっくに別れたし。いたら言わねえし」
「そう、だったんだ……」
「桧瀧、ご愁傷様」と深刻そうに言ってくる菊乃に吹き出した。
「お前、それ反則だって」
「桧瀧、頭だいじょーぶ?」
再び笑い出す彼に首を傾げた。
くつくつと笑いながら桧瀧は彼女の両頬を大きな両手で包み、目線を合わせた。
「俺、結構真面目よ?」
大きな瞳を瞬かせる。
それは、少女の思考を止める瞬間だった。
×××
「んっ…ふ」
その後も容赦のないキス責めを受け続け、意識を手放した菊乃。
「酸欠?はっ……かーわい」
悪びれる素振りも見せずに言うと、抱えていた少女をソファの上へ寝かせる。
目に付いた缶ビールを手に取れば、既に温い。
「にっが……」
含んだアルコールは、苦味が一層増した味になっていた。
END
20260104
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