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リーニエント

第7章 アガパンサス



「……っ!」

「蘭子がどした?」

「やっぱり、内影君たち付き合ってる?」

「……なわけっ」

「あのね、キス……してたって」

「っ!」

今度は内影が顔を逸らしてしまった。
これが答えではないだろうか……みやのは確信と共に何故か胸が痛んだ。

「綺麗だもんね。蘭子さん」

件の胡蝶 蘭子(こちょう らんこ)。
別のクラスだが、内影の事をうっちーと呼ぶ彼の古い友人である。
蘭子は名前通りの派手な外見で、何かと目立つ。
その為彼女の周囲にいる者は噂のネタにされやすいのが常であった。
ある意味トラブルメーカーな蘭子嬢。
つい最近知り合ったばかりのみやのにはそんな事情を知る由など無かった。

「違うから」

「内影君てば、恥ずかしいんだ」

「だから、違うんだよ」

「だって、私関係ないから」

「関係無い……本当に?」

語尾が低く冷やかに響いて、空気が変わったような気がした。

「内影、くん?」

「みゃーのは、無関係?」

「えっうん」

「解った……」

大きな溜め息と共に頭を垂れ、両肩を落とす内影。
無関係と問われ、吊られるように肯定してしまったみやのは自身の気持ちが解らないままだった。

自身と内影は付き合っては居ないが、一緒に帰る内に意識し始めていたのも事実。
何かと彼は手を繋ごうとしてきたし、またみやのも別に嫌では無かったので求められるままそうした。

けれど、一度も内影から告白などそう言った類いの言葉を受けた事は無い。
とても曖昧な関係だと思いながら、それを壊す勇気もない彼女は元来のマイペースな性格も相まって、いつの間にか忘れていた。

「やっなに……ん!」

彼女が座る机の両脇に手を置く内影。
近付く彼の顔が今まで見たことの無い真剣な表情で、みやのは緊張から身体が強張った。

咄嗟に目を閉じた瞬間、唇に感じたのは柔らかな感触。

「既成事実って言うんだっけ?無関係なんて事、言えなくなるかな」

「え、何の話……ん!」

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