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リーニエント

第7章 アガパンサス


もう一度同じ感触に襲われる。
二度目となる今回は見開いたままだった。みやのはそれが彼の唇だと理解する。

「な、何してっ」

「あんた、口もちっさいのな」

「うち、んんぅ」

彼の両腕は思ったより、筋肉質だ。
自分の頬から耳に掛かる右手と、襟足に回された左手はホールドするように固定して動いてくれない。
こんな行為をされるとは思っていなかったみやのは、思考が停止したかの様にフリーズしてしまう。
唯一出来たのは、彼の曲げられた肘の袖を握る事。

「はぁ……。誤解されたままなんて、たまったもんじゃない」

「なんで内影君……」

「解らないかな。俺、みゃーのが好きなの」

ふにっと、みやののほっぺを摘まむ内影。
呆けた顔の頬は思ったよりも柔らかく、仕掛けた方が照れてしまう。

「……へっ!?でででも、蘭子さん!」

「目に入ったゴミ」

「え?」

「蘭子の目にゴミ入ったの。あいつ、爪長いだろ?あれですんげえ擦るから、止めたんだよ」

確かに、蘭子の爪は長い。
ネイルアートこそ施してはいなかったが、しっかり手入れされた綺麗な爪だ。

「ゴミ……」

「そ、こうやって覗き込んだの」

「うん?」

「遠くからだと、キスしてるように見えたんじゃない?」

「あ……っ」

実演とばかりに、みやのの顔を覗き込むと上目遣いの彼女と目が合う。
ふっと目尻を下げた内影は再度彼女に口付けた。

「これは、キスだけどね」

「う、内影君!」

「ね、みゃーの。俺、みやのが大好き」

「あ、あのっ」

「みゃーのって響きが気になったってのが最初なんだけどね」

「う、うん」

「何か目が離せなくなったっていうか、コロコロ笑う所可愛いなーって……あれ」

「……っっ」

顔を真っ赤に染めたみやの。
膝に置いていた手は、プリーツスカートの裾を握り締めていた。

「みゃーの、泣いてる?」

「まって、これ以上聞いちゃうと……死んじゃう」

「え?」

「ふぇっ苦しい……内影君」

「みゃーの?」

「わ、私も、好き……です」

「ほんと?」

「うん。内影君、大好き」

自身の袖口でみやのの涙を拭うと、返事の代わりにとても嬉しそうな笑みを見せた。

END
20260420
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