
リニエンアナザー
第1章 クロタネソウ
「元々狡いんだよ、俺」
「え、何」
「これからは千種にも分かりやすーく、口説いていくから」
「何言って……んんっ」
千種の唇へふにっと人差し指を押し付け、少し開いた下唇をなぞる。
「ね、千種……していい?」
「……は?」
言葉の意味をいまいち捉えられずにいる千種。
その間にも少しずつ近くなる黒谷の顔。掛かる息遣いに、気後れする。
「黒谷、近……っ」
こつっと後頭部が壁に当たった刹那だった。
額に黒谷の唇が押し付けられ、両瞼、鼻先へと続けて彼の唇が掠める。
一拍間を置いてから唇に感じた柔らかな感触に、全身がピリッと痺れた。
「え、え……いまのって……んん!」
壁の冷感とは真逆の熱さだと思った。
壁に追いやられ、逃げられない所も彼の計算済みだったのだろうか。

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