
リニエンアナザー
第1章 クロタネソウ
突っ伏した机の冷たさに、心地の良い眠気が落ちてくる。
この日は実習時間だった。
瞼の重みに抗えず閉じられたその頃。教室内の自由時間を満喫する生徒達の雑音が入り交じる中、確かに耳に入って来たそれに肩が跳ねあがった。
───もうすぐ地区予選始まるって、サッカー部強豪だもんねこの学校
───だよね、チームも数組あるし。あの中から選出されるとか、信じられない
───そうだ、知ってる?サッカー部の……黒谷(くろたに)君。彼女出来たみたい
───あー次期キャプテンだっけ?なんか、○○高の制服着てたって……
まるで、喉元に飲み込めない何かが絡まったみたいな不快感。踠くように顔を反対側へ傾ける。
下顎が震え、湿り気を帯びた襟口がへたれていた。
『少しのあいだ一緒に帰れない』
一週間前の帰り道、バス停にある自販機の前で言われた一言。
何かの談笑ついでに軽く言われたらしい。
缶ジュースを手渡す黒谷の手が若干震えていたのか、千種(ちぐさ)自身が震えていたのかすら記憶に無い程動揺した。
伏線回収が今なのかと、空想じみた感想に自嘲が漏れる。
千種は机の下の太股に爪を立てていた。

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