戻れない場所
第2章 1
「…キスしよう。」
彼はとても驚いた様子。
でも直ぐに笑みに変わって、
「いいよ。」
と、そう言った。
「あ、でも俺からする…だから…め、目瞑って!」
「うん、わかった。」
私は彼に言われた通りに、目を瞑る。
そして、静かに唇が重なった。
甘くて溶けるようなキス。
一瞬の出来事だったのに、とても長く感じた。
「やべぇ、恥ずかしい…。」
二人は俯く。
そして顔を見合わせて、また唇を重ねた。
彼は唇を離して私をぎゅっと抱き締めて、耳元で囁いた。
「真奈、愛してる。」
私は頷く変わりに、彼をぎゅっと抱き締め返した。