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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第1章 柳家の娘

 自分なんぞ、たった一人の古女房でさえ、その扱いに手を焼いているというのに。ああ、今日もまた家に帰れば、稼ぎが少ないと女房にどやされ、四人の子どもたちには白い眼で見られるのだろう―。
 浮気をしたくても、その軍資金も度胸もなく、ついでに、この面相では光王のように黙って突っ立っていても、女の方が寄ってきて、いそいそと世話を焼いてくれるわけでもない。
「結局のところ、俺には二十一年連れ添ったあの嬶(かか)ァと糞生意気なガキ共しかいねえってことかよ」
 露天商はもう一度大きな溜め息をつくと、今度は盛大なくしゃみをした。
「やけに冷えると思ったら、今度は雪かよ。全く、貧乏人にはこの寒さはこたえるぜ」
 彼は鈍色の空を恨めしげに仰ぎ、ぶつぶつと口の中で悪態を繰り返したのだった。

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