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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第10章 予期せぬ真実

「うん、何でも話してくれ」
「お話とは、私が祝言の夜、秀龍さまにお願いしたことについてなのです」
 束の間、秀龍が怯んだように見えた。
 短い沈黙を挟んで、彼は低い声で言った。
「まさか、真に皇家を去るとでもいうのか?」
 春泉は愕いて、つい声が大きくなった。
「いいえ、私は戻るつもりでいます。もし、秀龍さまが許して下さったらの話ですが。元々、身勝手なことをしでかしたのは私ですから、このまま離縁されても致し方ないと覚悟はしております。―それに、お義父さまやお義母さまもお怒りになっているでしょうし」
 比較的物判りの良い義父はともかく、謹厳で気難しい義母は我が儘な嫁だとさぞ腹を立てていることだろう。
―これだから、常民の娘など娶るものではない。皇家、しかも秀龍であれば、どのような名家からもよりどりみどりで両班の娘を妻に迎えられたものを。
 怒っている様が眼に浮かぶようだ。
 春泉の不安を秀龍は笑い飛ばした。
「それは心配ない。そなたは実家の義父上の供養のために、二泊三日で山寺に籠もっていることになっている。父上や母上にはやはり知られずに済むならば、それに越したことはないからな。まっ、万が一、母上が今回のことを知り、そなたを実家に戻せなどと言ったら、私の方が皇家を出る」
「そんな。そのようなことは、ご冗談でもお口にしてはなりません、秀龍さま」
 春泉が顔色を変えると、秀龍は真顔になった。
「冗談などではない。良いか、春泉、私はそなたをこれから先、生涯、傍から離すつもりはない。そなたがどうしても私を好きになれず、自分から離れてゆく場合は残念だが、致し方ない。私も男らしく潔く諦めよう。さりながら、私がそなたを離すことはない。皇家かそなたかどちらかを選べと言われたら、私は間違いなくそなたを選ぶ。それだけは憶えおいて欲しい」
「私のような者にそこまでおっしゃって頂いて。春泉は幸せ者です」
 思わず熱いものが込み上げ、春泉は涙を瞼の裏で乾かした。

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